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​2019/08/29

※140SS

杏寿郎は何故かわたしと二人きりの時は口を閉ざす。わたし以外にはいつもの調子で話すのに。今も千くんが席を外した途端、沈黙が落ちた。緊張する。「何か喋ってよ。」「無理だ。君と二人きりになると、不思議なことに何も思い浮かばなくてな。」眉尻を下げてはにかむ彼に、わたしも言葉が浮かばなくなった。

行き先を忘れた言葉たちは、    

全部空へと浮ついていった。

write:2019/08/29

edit  :2020/08/03

 

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