生きづらい。
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2019/07/15
わたしも鬼殺隊の一員だから、身体中傷だらけなのは当然だ。この間の任務で脇腹を抉られた。その前は胸元を引っかかれた。沐浴や温泉に浸かる度に、何だか惨めな気持ちになり、そしてそう想ってしまう自分に腹が立つ。わたしと同じような女性隊員だっているんだ。そもそも、こうなることくらい入隊前から分かっていたはずだ。だから、嫁の貰い手なんてくだらないことを考えるんじゃない。傷物の花嫁なんて、そんな物好き居るわけがないだろう。それ以前に、恋とか愛とか、考えている暇も、している暇も無い。無い、のに。「綺麗だ。」と、わたしの傷跡に触れる声が囁いた。普段の冷めた佇まいからは想像つかない熱を帯びた吐息の口付けに、わたしの凍った心が溶かされていく。ぞわり、と悪寒が走った。「ちがい、ます。」そんなこと無い。わたしが綺麗なわけない。いつも己の血にまみれ、鬼に切り刻まれた身体だ。町屋の娘の方が、きめ細やかな色白い肌をしていて、わたしなんかよりもよっぽど綺麗なのに。目の前に晒された傷を隠したくて、身をよじって逃げようとした。「なぜ否定する。」手を取られ、指が絡まる。わたしとは違う男性的な骨張った関節に、皮の厚い手のひら。少し湿っていて、熱かった。まるで壊れ物を扱うかのように握られる繊細さに、振り解くことを忘れてしまいそうになる。「お前の、生き抜いた証だ。」そんな綺麗に生き抜いてない。ただただ死に物狂いに、地を這いつくばってでも生きてきた意地汚いわたしが、綺麗だなんてことは無い。信じるものか。きっと上辺だけの社交辞令でしょう? 必死に頭を横に振る。ちがう。ちがう。わたしは綺麗じゃない。昔から、生きるためなら泥水を啜るし、自身の身体でさえも売るほどの、軽蔑されるべき人間。「お前が何を言おうと、俺はお前が綺麗だと思う。」その真っ直ぐわたしを射る無垢な青い眼差しが尊いほどに眩しくて、どろどろに溶かされてしまったわたしの心が羨ましくて、わたしは彼から顔を背けることしか出来なかった。
綺麗なのは、あなたの方よ。
write:2019/07/15
edit :2020/08/03