top of page

 普段は理性を保って明るく振る舞っているんだろう。酒を呷って箍が外れると、必ず泣いた。それから何かを求めて誰彼構わず漂うから、すかさず抱き留めてやる。ただ単に温もりが恋しいのか、腕の中に閉じ込めた彼女はすんなりとオレに縋り付いてくれた。しかし彼女は泣き止む様子は無い。生憎オレも泣き止ませる術は無い。さめざめと泣く彼女にオレが出来ることとしたら、酒が抜け切るまであいつの代わりをしてやるくらい。淋しい心を縋らせて、物足りない身体に埋め込んで、言い表せない感情を抜き合って。オレがその柔い奥底を穿てば、彼女の鋭利な爪が背中を抉る。そうすればオレたちはまた明日を迎えられるから。
 ……ここにいるべきなのは、あいつなんだって認めないとな。そうでなきゃ救われない。彼女も、オレも。

​ 

天泣の箱庭

 

write:2022/03/30

edit  :2022/03/31

words by icca

瑪瑙(@_MNU260)名義

words by icca

 

bottom of page