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 いつもお前の視線の先には、オレじゃない誰かが居た。それを『やだな』と思ったのは、今に始まった話では無い。
 土煙が立ち込める訓練所でも、技の余波が飛んできても。何があってもその眼差しが逸れることは無かった。見据えているのはたった一人、目深に帽子を被るその人だけ。
 その真っ直ぐさに射抜かれたからこそ、それが憎らしくもある。きっとコンゴウ団の中で一番に明日へ突き進んでいるのは、こいつだ。自他共に認めるせっかちなオレでも、どんなにしたって追い付けない。こうして隣に並んでたって、オレはその背中を見ている気分になる。
 オレはずっとお前のこと見てたのに、お前が見てるのはずっと俺じゃない誰かだった。

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眼差のみが告ぐ

 

write:2022/03/30

edit  :2022/03/31

words by icca

瑪瑙(@_MNU260)名義

words by icca

 

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