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 鮮やかな紅が綺麗で、あの人と会える日にさしてみた。鈍感なあの人のことだから、きっと気付かないかもしれない。でも好きな人と会うなら、一番可愛い自分でありたいもの。「おめえにはこれくらいでいいんだよ」自分の唇に付いた紅を拭うセキが、わたしの横を通り過ぎていく。まって、今なにした?

 想い人の唇に、紅が乗っていた。それは吸血するように顔から血色を奪い取り、儚い印象を更に引き立てる。それでも色褪せない、オレを純粋に慕う眼差し。自分でもおっかないと思う感情が湧きあがる。「おめえはこれくらいでいいんだよ」気恥ずかしさと付着した紅を拭いながら、オレはその場から逃げた。

紅散らし

 

write:2022/02/21

edit  :2022/03/19

words by icca

瑪瑙(@_MNU260)名義

words by icca

 

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