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​2022/02/04

開き切った花に半額の値段が付けられていた時、おれが感じたのは『可哀想』という気持ちだった。しかし、おれには花を愛でる趣味は生憎持っていない。ではなぜ花に情が湧いたのかというと、それはきっと彼女の影響だろう。あいつは何にでも、誰にでも、『可哀想』と勝手に感情を決めつける。とはいえ、「売り物にならなくて捨てられるより、買われて枯れるまで鑑賞される方が嬉しいよね」との彼女の言い分は、正直分からなくもなかった。だからこの半値の花束を彼女が見かけても『可哀想』だと言って手にするだろうから、おれもつい手を伸ばしてしまったわけだ。その花束は、上書きされた値札によって、悲しいかな、名前が潰れてしまって読めない。けれど、花の名前なんておれにとっては些細なことで、込められた花言葉もどうでも良かった。ただ、こうして彼女のために花を買って帰る瞬間が、本当に幸せだったんだ。たとえ、彼女にこの花を見せる機会が無くとも。

 

イエローストック:さびしい恋

write:2022/02/04

​edit  :2022/02/14

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