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2021/11/17

※お題ガチャより

​※ショタ

 なかなかしぶといチャレンジャーだった。おれはジムリーダーだから、ちゃんと壁になってやらなきゃいけない。だからジムバトルだって本気だ。それが何戦も続くと、疲労が溜まるのも仕方の無いこと。
 さらに、七番目のジムなんて、結構な数をふるいにかけられている方だ。きっと一番目や二番目のジムとのチャレンジャー数は、比べ物にもならないだろう。しかし、ポケモンの強さは、格段に違ってくるはずだ。
 特におれはまだジムリーダーとして新入りの部類。ここでかまけていたら、あっという間に七番目の座を取られてしまう。まだ街を盛り上げられていないのに。せめて、才能がある妹がジムを継げるくらいになるまでは、おれが頑張らなきゃ。
 そんな緊張をずっと張り詰めているものだから、ちょっとでも緩ませるとボロボロとドジを踏む。
 今日最後のチャレンジャー戦が終わって、ふらふらと自宅に戻ろうとしていた時だ。この後はジムリーダーの集会があるから、それの準備をしなきゃ。そうぼんやり考えながらのろのろと歩いていたら、お隣さんのおねいさんが家前の歩道を掃除していた。

 くたくたのおれに気がついたおねいさんは、きっとおれが今日ジム戦があることを母から聞いていたんだろう。「お疲れ様」と声を掛けてくれたので、おれも「ありがとうございます」ってなるべく笑顔で答える。おねいさんの前では、どうしてもかっこつけたかった。ただ、別のことに気を取られたから、足元が疎かになったんだと思う。
 その瞬間、歩道の段差につまずいたおれは、あろうことかおねいさんの胸に飛び込んでしまった。いや、おねいさんがよろけたおれを受け止めようとしてくれたのかもしれない。どちらにしても、おれはおねいさんの胸に、わしづかみする形で触れてしまった。
 布団よりは弾力があって、けれども布団以上にふわふわで。まだ小さい妹の頬より柔らかい気がする。とにかく今まで感じたことの無い感触に、身体中に雷が落ちたような衝撃を受けて、おれの意識は一瞬遠のいた。おねいさんの「ネズくん大丈夫!?」という声で我に返り、すぐさまバッと離れた。
 すみません。わざとじゃないんです。今ちょっと疲れてて。ごめんなさい。
 そんな謝罪の言葉が頭にたくさん並べていたというのに。おれは何故か「ふわふわ!」と絶叫してしまった。慌てて口を塞いだとて、時はすでに遅し。おれは、顔を真っ赤にしたおねいさんから無言で平手打ちを食らうのだった。

「うわっ。ネズどうした? それ、なんかメープルの葉みてぇだな」
「うるせぇだまれころすぞ」
「うわあ、こえ〜」

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write:2021/11/17

​edit  :2021/12/12

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