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2021/11/15

※祝う気持ちがあるのか分からない​アニバーサリー記念​

好きな女の夢を見た。あの頑固で生意気で男勝りな彼女が、おれの下でか細く喘ぎながらおれの名前を呼ぶ夢。おれの片想いで、ただの願望が見せた夢だと言うのに、刻まれる背中の爪痕、腰に絡まる脚、紅潮した頬、キツくうねる胎内の感触が、今も生々しくおれの中に残っていた。あのおれを睨むような視線だけが、らしくない彼女を彼女たらしめていた気がする。潤んだ目で睨まれたって、夢の中のおれには興奮剤にしかならなかったけど。しかしながら、おれは彼女を抱いたことなんてない。そもそも男嫌いを明言している彼女に近寄ることも出来てないのだ。だから、彼女を抱く夢なんて、きっと彼女からしたら最低極まりないだろう。彼女への感情を紛らわそうと酒を飲んだのに、男の欲とは本能とは、どうしてこんなにも浅ましいのか。夢の中の感触だって、彼女への想いが耐え切れず仕方なく適当に抱いた、顔も思い出せない女のものだっただろうに。いつか辛抱出来ず、彼女に気持ちを吐露してしまうかもしれない。その時に拒否られたら、おれは今後どうやって生きていけば良いのか分からなくなる。下手したらホテルに連れ込んで既成事実を、まで考えてしまう自分が本当に恐ろしかった。そんなおれの葛藤を、彼女ずっと知らないままでいる。嫌われるよりは無関心でいてくれた方が良い。基本的に同性としか関わらないこともあって、おかげで誰かに嫉妬したり劣等感に苛まれたりすることは無かった。無かったんだ──今まで。初めて見る、彼女の楽しそうに赤らめた顔。いつもより弾んでいる声。それがおれの前だったら良かったのに。見知らぬ優男との逢瀬で見せた顔だったから、おれの中で何かが崩れる音を聞いた。……あ、そうだ新譜のタイトル。おまえをころしておれもしぬ。

 

write:2021/11/15

​edit  :2021/12/12

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