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​2021/09/02

※『束の間の一花』より

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 アホウそうに笑うおまえが好きだったんだ。

 自分が不治の病に冒されても、ヘラヘラしやがるくらいにはノーテンキさなのに。人に対しては超がつくほど神経質。おれがおまえを想って何か行動すれば、必ずと言っていいほどおまえはおれに「ごめんね」と謝る。

 おまえが喜ぶと思って、おれが好きでやってるんです。迷惑だなんて勝手に決めつけるんじゃねぇ。どうせなら、喜んでくれませんかね。おまえが素直に喜んでくれたなら、おれはおまえが幸せだったって勘違い出来るんだから。

 それなのに、泣きながら謝れたら。おれは何もしない方が良かったんじゃねぇのかって、おれの行動でおまえを不幸にしているんかって、不安になっちまうんです。

 だから、最後くらいはおれのためにも喜んでくださいよ。

 おれの行動が、徒労にならないように。おまえと過ごした日々を、良かったって振り返れるように。おまえがくれたこの気持ちは、絶対に意味があるんだって自信持って思えるように。

 おまえが幸せだったと喜んでくれたなら、おれはおまえの居ない明日を何とか生きていけるから。

 束の間の恋を、後悔させないでくれ。

 

write:2021/09/02

edit  :​2021/09/23

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