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​2021/05/17

※140SS​

​※某お題ガチャより

​※引用:あなた(宇多田ヒカル)

​『あなたいがい、なんにもいらない』そう彼女が口ずさんだ時、内心焦った。おれに気づかない彼女は自然な様子で、韻を踏む心地良いリリックを唇に乗せていく。数年前のその曲は、代わり映えしない日常の愛を歌っていた。それを向けたい相手がいるという事実に、おれは今日も想いを言えないままでいる。

 

write:2021/05/17

 

​ 

『あなたいがい、なんにもいらない』そう口ずさみながら思い浮かべるのは、猫背な背中。特別親しいわけでもないから、いつも背中を見つめることしか出来なかった。彼がこちらに向くことは無い。わたしのことなんて意識されていない。でも、それが良い。わたしは今日も彼を想う苦しみを甘受していく。

 

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