生きづらい。
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2020/08/07
「ッや、待って」
さんざん解されて濡れそぼったソコへ宛てがわれた質量に、血の気が引いていく。わたしの制止の声とお腹を押し返す右手に、ネズは昂る熱にブレーキをかけてくれた。
「っ……また、ですか?」
「う、うん。……ご、めん」
あからさまに顔を顰めるネズに、わたしは目が合わせられなくて、心の中で土下座をイメージしながら胸元で握った左手しか見れなかった。
そんな様子のわたしを見たネズが髪の毛をかき上げながら大きくため息をついて、その怒気が含まれたようなため息にわたしは思わず身を震わせる。
「……分かりました」
「あ、ネ──」
一瞥もくれずわたしの上から退いたネズは、そのままベッドから降りて寝室を出て行ってしまった。後ろ髪を引くどころか、無意識に腕を掴もうとした手も届くことがなかった。
そう、『また』。また、わたしはやってしまった。目元が熱くなって、こらえるよう唇を噛みしめる。泣くな、わたしのせいなんだから。自分に叱咤しながら、シーツに包まり寝転がる。
わたしは、どうしようもないほどに、手の付けようがない処女だった。やり方が分からないほど無知ではないものの、受け容れられたものは指まで。付き合って月日が経つというのに、わたしは未だに恋人のネズと体を繋げることが出来ていなかった。
ネズは、初めてだから仕方ないと、受け容れる側の方が負担があるからと、怖じ気づくわたしを宥めてくれる。けれど、やっぱり好きな人とはひとつになりたいし、一緒に気持ち良くなりたいし、何よりネズの気持ちに応えたい。精神的に繋がっていても、物理的にも繋がりが欲しい。
だから、二人で何とか雰囲気や前戯を工夫しているけれど、臆病者のわたしは一歩も進むことが出来なかった。
クルマユ状態になってからどれだけ時間が経っただろう。泣き疲れてしまったのか、うとうと微睡んでいたところに、ネズがベッドに潜り込んで来てハッと目が覚める。
「っ、ん」
ネズの冷たい身体が背中に張り付いて、同じように冷たい四肢がお腹や脚に絡まって、わたしは冷たさからふるりと震えた。わたしがまだ起きていることを知ってか知らずか、ネズはわたしの首筋に鼻をうずめて深く呼吸し始めるから、生暖かい吐息が操ったくゾクゾクと反応してへその下が切なく疼く。
こんなにはしたない身体をしているというのに、わたしはどうして……。
鼻の奥がツーンとして、ついに涙が目の縁から零れた。思わず鼻をすすってしまい、その音にネズはおもむろに身を起こしてわたしの顔を覗き込む。
「……なんで泣いていやがる」
「う。だっ、て、」
泣き始めたら、もう止まらない。込み上げてくる涙と鳴咽にわたしは上手く呼吸が出来なくて、言葉を紡ごうとすれば息が詰まって咳き込んでしまった。
ネズはわたしの肩を引いて向かい合わせてから抱き竦めて、子どもをあやすように背中を撫でてくれた。
そのネズの優しさに、わたしは堰を切ったように泣きじゃくって、ネズはわたしが落ち着くまでずっとあやしてくれた。
「……おれの方こそすみません」
「う、ネズは、わるっ、くな、っひく」
「いや、焦ってました。いつも今日こそはって無駄に力入れて」
「っね、ず」
「おまえにはおまえのペースがありますよね。おれの方が慣れているわけだから、おまえに合わせるべきでした」
慣れている、という言葉にわたしは何だかへこんだ気持ちになる。わたしにとってネズが初めてだけれど、ネズにとってわたしは星の数(というほど経験あるかは知らないけど)ほどの女性のひとりに過ぎない。こんな面倒臭い女は他に居なかっただろうに。いつかヤれないからって捨てられたりしないだろうか。考えただけでまた胸が押し潰されるような圧迫感に息が苦しくなる。汚い嗚咽を漏らせば、背中に回っているネズの手が再び動き出す。
「わた、しっ、も、がんばるっ、から、っひく、す、
すてな、いで」
一番面倒臭い女に成り下がってしまった気がする。
言うつもりはなかったのに。それでもわたしは、薄い胸板に縋り付いた。ネズが好きだから。
「なに馬鹿なこと言ってやがりますかね」
泣き縋るわたしの背中をトントンと優しく叩くネズは、呆れたように息をつきながらもそう優しく囁いた。背中を撫でていた手が、嗚咽を堪えて固く結んだ唇に触れる。親指で感触を確かめるような触り方が、やんわりとわたしの緊張を解きほぐした。
「ネ、」
口を薄く開いた時、力強く顔を引き寄せられて、強引に噛み付かれた。そのまま滑り込む肉厚で鋭い舌が、発音しようと立てていたそれに絡みつきながら、歯並びをなぞったり上顎をつついたり、わたしと同じものとは思えないほど自由に攻め立られて、わたしは息苦しさもこぼれる唾液も忘れて、不自由ながらも無我夢中に絡み合わせた。
無意識に目をつぶってしまったから、いつの間にか唇に触れていた手が耳を塞いでいるから、余計に蹂躙を感じてしまう。脳が犯されているみたいに勘違いして、胸の奥が締め付けられる。
「ふ、あ……」
好き。ネズ、大好き。
情動にぼやける思考で閉じた瞼から涙が溢れて出した時に、ネズは名残惜しそうにわたしの口端にこぼれていた唾液を舐め取りながら離れた。少しだけ目を開けば、涙で歪む視界に一際輝くアイスグリーンの瞳。それが、ゆるりと細められて弧を描く。
「おまえこそ、おれから逃げないでくださいよ」
逃げないよ。逃がす気もないくせに。わたしを取り逃がさないようしっかり捕まえていてよ。
「んっ、ぅ」
息が上がって上手く言葉に出来なくて、わたしはネズの肩に擦り寄ると、ネズもまた、わたしの顔に涙で張り付いた髪の毛を丁寧に払ってくれて、そのまま抱き寄せてくれる。
涙が重力に従って横に流れてシーツに落ちて染み込む音と、ネズの胸から聞こえてくる暖かな心音が重なって、何とも言い難い感情が込み上がって来たわたしはまた泣いてしまっていた。
write:2020/08/07
edit :2021/12/26