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​2020/07/17

※某方の呟きより

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『今度の日曜、空いてますか?』

 電話で何気無く聞かれたから「空いてるよぉ」と何気無く返事してしまったけど、電話の後手帳に予定を書き込む時に「これってもしかしてデートでは?」と一人自室で大暴れしたことが数日前だと言うのに懐かしく感じた。

 今日ネズくんに誘われたのは、シュートシティのとあるカフェ。二階だから外の目を気にせずに居られて、ネズくん好みの紅茶をいれてくれる、最近行きつけのお店とのこと。案内したのはわたしが初めてらしい。好きな人のお気に入りを教えてもらえるのは嬉しかった。

 わたしは水出しアイスティーを飲むことに集中するフリをしながら、窓の外をぼんやりと眺める向かい側の席に座るネズくんを盗み見た。幼なじみで、恋人のネズくん。まだ付き合い始めて日は浅いけど、想いを募らせていた年月を含めると何だか熟年感を感じてしまう。

 さらに初心なわたしは、この日のために入念に入念を重ねた入念な準備をして来た。少しでも身に付いたお肉を落とそうと運動したり、相応の服や化粧を拵えたり。ネズくんのとなりに立って、指をさされないように。もちろん見えない部分のケアもバッチリ。ムダ毛の処理だって全身に施したし、下着も勝負ものを新調して来た。

 だって、もしかしたらもしかしなくても、今日シちゃうんじゃない?! 待って、どうしよう!

 そう考え出したら止まらない。経験がまるっきり無い訳じゃないけど、でもやっぱり長年想い馳せていた人とのは特別に感じる。ずっと、夢見てきた。痴態を暴かれることに期待してしまう。まだ午後3時だと言うのに、頭の中はあんなことやそんなことでいっぱいだ。ふしだらな妄想で緩む口許を必死に引き締める。ああ、待ち遠しい!

 ──なんて思ってた時もありましたね。

「それじゃあ、マリィが家で待っているんで」

「え、あ、うん、またね……」

 ネズくんとは夕飯前に別れた。そ、そうですよね、初デートでそんな、エッチなこと起きないね、ええ、分かってた、……うん。

「う、わああああ……」

 顔が熱くて、思わず両手で覆う。破廉恥な自分がとにかく恥ずかしい。けど、心のどこかでは何故か安堵する自分もいた。

「あれ? アニキ早いね。夕ご飯いらんて言うとらんかったっけ」
「……言ってたけど、ちょっと抑えられそうも無かったんで」
「んん? そう」

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write:2020/07/17

​edit  :2021/12/26

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