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​2020/06/01

※元ネタ:ラリー・フォルク(エースコンバットZERO)

​※061の日

「よう相棒、まだ生きてるか?」


 その台詞は、彼女が好きな映画のものだ。寄せ集めの傭兵集団の中で出会い、戦いを通して相棒から最大の敵へと変わるその人物に彼女は心を奪われ、それから真似て台詞を多用していた。おれはその映画をよく一緒に観せられていたから、どの場面の台詞なのか嫌でも分かる。口癖だったその台詞は様々なシーンで放たれていたが、先程の台詞はニュアンス的に終盤に放たれたものに近かった。

 久々に会った彼女は髪が伸びていて、一瞬見間違えそうになる。しかし、大人びた表情には昔の面影を残していて、そして彼女が一等気に入っていた台詞を口にすれば、すぐに分かった。


「……もしかして、覚えてない?」
 

 微動だにしないおれに、目の前の彼女は不安そうに顔を曇らせる。

 そんなわけあるか。親の都合とはいえ、まともに別れの言葉もなく消えたおまえを、恨まなかった日なんて。

 ──もう二度とおれから離れないように、繋ぎ留めておかねえと。

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write:2020/06/01

​edit  :2021/12/28

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