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​2020/05/02

※父ネズと幼女娘(とても健全)

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 まっくらなへやでまぶたがひらく。なんだかこわいゆめをみたきがする。けれど、どんなゆめだったかわすれてしまった。もういちどねむろうとしても、むねがどきどきしておちつかない。ぞわぞわして、はらはらして、はなのおくがつんとした。
 たまらずとびおきて、いっしょにねてたジグザグマちゃんのぬいぐるみといっしょにへやをでる。

 ……パパ、まだおきてるかな。
 パパがおしごとするおへやだからはいっちゃいけないってママにいわれてるけど、おちつかないわたしはしずかにパパのへやのドアをあけた。ぼんやりとしたひかりのなかで、パパのせなかがみえる。ほそくてかたいけど、とってもあんしんするパパのせなか。

「……ぱ、パパ、」
 ヘッドホンをしておしごとしてるからきこえないとおもっていたのに、パパはそれをはずしながらふりむいてくれた。

「──どうしましたか?」
 きづいてくれたことがうれしくて、はいっちゃいけないのにわらってくれて、パパのみなれたやさしいかおにあんしんして、わたしのめからはろほろとなみだがこぼれだす。

「パパ……うぅ……」
「おやおや、怖い夢でも見ちまいましたかね」
 パパはかかえていたギターをラックにかけて、わたしのそばにきてくれた。めのまえがなみだでぼやけて、かぐおうとパジャマのそででぐしぐししたら、しゃがんだパパのてにやさしくおさえられる。
「こら、そんなに擦ったらだめですよ」
 パパのおやゆびがめもとをなぞってなみだをすくった。つめたいのに、あったかくて、むねがしめつけられるようで、ジグザグマちゃんのぬいぐるみをぎゅっとだきしめる。
「パパぁ……」
「はい、パパはここにいますよ」
 そういって、パパはわたしをだきしめてくれた。ごつごつとかたくて、パパのやさしいかおりがふんわりして、わたしはさらにぐしゃぐしゃになきじゃくった。
 そのままパパにだっこされて、じぶんのへやにもどってくる。
「わたし、おねいさんになれるかな、なきむしでもだいじょぶかな」
 わたしをベッドにおろしてくれるパパにきいた。パパは少し目を丸くして、でもすぐもどって、わたしのむなもとまでおふとんをかけてくれる。
「大丈夫、なれますよ。最初からお兄さんやお姉さんとして産まれてくる人はいないんです」
 みあげるパパのかおは、ランプにてらされてあったかくわらっていた。パパのてが、わたしのあたまをやわらかくなでてくれる。かみをすくようにながして、ゆびにからませていた。
「これからお姉さんとして大きくなっていけば良いんですよ。けれど、もし難しく感じたら、パパに話してごらん。パパもお兄さんだからね。きっと力になれますよ」
「……うん」
 マリィちゃんのおにいさんをしてるパパがいてくれるなら、だいじょぶなきがしてきた。そうおもうと、パパのおちついたひくいこえといっしょに、ねむけがてまねいてくる。
「ほら、もうおやすみ。明日はママに会いに行くんですから」
「うん」
 そうだ。あしたはパパがおしごとおやすみだから、ママにあいにいくんだ。ママげんきかな。おなかのこもげんきかな。わたしはげんきだよって、パパといっしょだからさみしくないよって、つたえなきゃ。 はやおきして、ママのかわりにねぼすけなパパをおこして、おはなやさんでパパとえらんだおはなをもって、ママにあうんだ。
「ねえ、こもりうた、うたって」
 パパがわたしのまぶたをなでるときに、そうおねがしてみた。パパのこもりうたはすきだけど、さいきんはいそがしいみたいでうたってくれない。もうおおきいからだめかな、もうすぐおねいさんになるから、なんてすこしだけドキドキする。

 けれど、パパはかるくいきをはいて「いいですよ」とくしゃりとわらってくれた。それは、わたしがとてもすきなパパのえがおだ。
「ただし、アンコールはねぇですからね」
 ゆったりとしたひくいこえのこもりうたと、それとおなじリズムでおなかをなでるやさしいて。

 わたしはアンコールなんてまたずに、ジグザグマちゃんのぬいぐるみをだきしめながら、すぐゆめのせかいへとみちびかれていった。

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irorok nen'nen

write:2020/05/02

​edit  :2021/12/13

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