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​2020/04/11

※ネズ→夢主→誰か

​ 

 いつか死ぬしたら、散骨したこの海で溺死したいと決めていた。一歩踏み出すことに、何の躊躇いも無い。気怠い生が気泡へと消えていく様子を、わたしはただ見ているだけ──のはずだった。

 吸い込んだ空気で肺が膨らみ、 水が押しのけられて口から吐き出されていく。本能的に喘ぐわたしを、硬くて煩わしい温もりが抱き竦めた。

「放っておけばいいのに」

 音もなく頭を振る仕草に、わたしは笑った。

「惨めに生きろって言うんだ、ネズはひどいや」

 どんなに嫌味たらしく言っても、腕の中からは解放されない。

「おれのために、生きてください」

 あーあ。ネズはきっと悪魔だね。

 

死にたがりと悪魔

write:2020/04/11

​edit  :2021/12/08

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