生きづらい。
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2020/03/05
シンガーソングライターとポケモンリーグスタッフ。ほとんど接点が無いだろう二つの職業が関わることは、おれと彼女の過ごした時間が長いということ。それもそのはず、だってジムリーダー時代から続いているんだから。
「──赤猫(あかねこ)」
そのあだ名は、おれと彼女がチャレンジャーだった時からのものだ。当時の彼女は、誰も寄せ付けないほど熱く鋭い、さながら地獄の業火のような少女だった。それを誰かが陰で揶揄して呼び始めた、言わば悪称。彼女の出生がカントー地方であることも起因しているんだろう。その意味を知った時、おれは彼女をそう呼び始めた奴に感嘆し、同時に憎悪の念を持った。今でこそおれしか呼ばなくなったものの、その遺恨は未だにおれの中で燻り続けている。まるで、彼女の業火が燃やした燃えカスが、今も熱帯びているように。
「ちょっと、誰が赤猫よ」
鋭い目付きは相も変わらず、苛立ちを含めておれを睨んでいた。さっきまではおれのことなど意識して無かった彼女が、ようやくこちらを向いてくれた。頬が緩みそうになるのを抑えつつ、しかしバレないよう手でも隠す。
「ああ、すみません。名前を忘れてしまったもので」
「あんたね……わたしがここ担当になってから何年経つと思ってんのさ」
「さあ、何年でしたかね」
「もう名乗るのも馬鹿らしくなって来たよ。まったく……あんたと委員長の板挟みになってたわたしを労る気持ちはないわけ?」
「いつもご苦労様です」
「心がこもってないんだよねぇ」
そんな雑言を投げつけ合う時間が愛おしく、しかしジムリーダーを退いた後も変わらない距離感が憎らしかった。
「赤猫っていいあだ名ですよね」
「ホント好きね、わたしは大っ嫌いだけど」
ええ、好きですね。これほどまでにおまえの性質を看破した言葉なんて無いでしょう。
彼女は捻れ曲がった性格だから、きっと愛の言葉など騒音だとかき消されてしまう。ならば、わざと反感を買いおれに突っかかって来るようにすれば、必然的に、おれを見てくれる。
そう、こちらに気を向けさせるようにすればいい。自身のあだ名を忌み嫌う彼女なら、無視出来ない彼女なら、絶対に反応するだろうから。
──なあ? 放火魔、責任を取ってくれよ。
write:2020/03/05
edit :2021/11/06