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​2020/11/30

※NTRに近い表現あり

 

好きな女の子が、知らない男に抱かれている映像を見つけてしまった時、どんな感情を抱くのが正解なのだろうか。彼女とは幼い頃、どうすることも出来なかった大人の事情で、遠い日に分かれたきり。その時から、おれたちにはミュージジャンと女優になる夢があった。別れ際に、お互い名を世界に轟かせよう、なんて約束をしたと思う。結局、おれは有名になってもガラルに引きこもってばかりで、他地方に移り住んだ彼女は名前を聞くどころが姿すら見やしないが。一縷の希望を持って、毎日寝る間際に彼女の名前を検索しては、おれが見たい項目がヒットしないことに毎回落胆していた。──というのに。寝ぼけているのかと何度も目をこすったり画面をこすったり、果ては上半身を起こして見返す。表示されている名前は芸名のようだが、おそらく本名をもじっているのだろう。何より。その風貌には見覚えがあった。忘れるはずもない、おれの初恋。固唾を飲み込みながらサンプル動画を再生すれば、字幕の質問に笑顔で受け答えする彼女が映っていた。台本があるだろうそのセリフがまどろっこしく、シークバーを半分以上進めれば、四つん這いになって穿たれ喘ぐ彼女の色着いた背中と、モザイクでぼかされていても生々しい音を立てる結合部が映った。吐き気がするほどムカつくのに、彼女を女性として見ていた男の本能は最低なほど愚直で、気付けば振動に合わせて扱いていた。彼女のなりたかった“女優”はきっとこんなものじゃない。そうわかっていたとしても、与えられる快楽に悦びを叫ぶ彼女が、ただ憎らしかった。加えて、彼女の華奢な姿態を厭らしく蹂躙する男優に嫉妬し、今まで想像出来なかった初恋の痴態に興奮し、初恋で扱く己に嫌悪し、といろんな感情がまぜこぜになって何も収集がつかなかった。2分にも満たないサンプルを観終わった冷静な頭が唯一わかることは、初恋の女の子で抜いたことと、白い岩漿を片手に彼女が出演するAVのアーカイブを全部購入していたことだけだった。

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画面の中のジュリエット

write:2020/11/30

​edit  :2021/06/08

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