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​2020/09/23

※ギフティへのお礼

 

せっかく貰ったものだから、使わなきゃ損だ。生憎の雨にも関わらず、二人で最寄りのコンビニに駆け込んで、気温よりも温かいそれをそれぞれの片手に収めて外に出る。家まで待ちきれないわたしは、傘に弾かれる雨音を聞き流しながらパッケージを開いて、それをひとつ口へ放り込んだ。硬めの衣が静かにシャクリと潰れると、歯ごたえのある柔らかな鶏肉の味と、鼻を通り抜けるような爽やかなレモンの味が口の中で広がる。ほんのり温かいそれを咀嚼すれば、ふたつの味が溶け合った。それが絶妙にマッチして舌の上で楽しそうに踊るものだから、思わず口角が上がる。ファンからもらったギフトで食べれていることも相まって、さらに美味しく感じた。「レモン味、うまいですか?」堪能するように噛み締めてるわたしの様子を見たからか、ネズがちょっとだけ興味深そうにわたしの手元にあるそれを覗き込む。「おいしいよ。食べてみる?」ピックでひとつ刺して持ち上げて、ネズの前に差し出した。「はい」ネズは一瞬きょとんとして、何故か周りを軽く見渡す。ついでに咳払いもした。「ほら早く、あーん」重力に従うそれは、少しずつピックに貫かれていく。「……っあ、」落ちる前に、とネズの口元に押し付ければ、渋々と口を開けてそれを咥えた。刺さらないように丁寧にピックを抜けば、それはコロンとネズの口の中へ転がっていく。「どう?」もぐもぐ咀嚼するネズにすぐさま感想を求めれば「……おいひいれすね」と返ってきたから、嬉しくてはにかんだ。「おれのもひとつあげましょうか」「わぁい、ありがと」嚥下終わったネズが、お返しに自分の手元にあるプレーン味と書かれたパッケージの中から、それをピックでひとつ持ち上げた。「はい」ずい、と差し出されたそれを、わたしはためらいなく口を開ける。「んあー、む」中に転がってきたそれからピックが引き抜かれたのを確認して、先ほどと同じように固い衣を歯で両断する。香ばしくて柔らかい鶏肉の味が口いっぱいに広がった。「むふ、おいひ」むぐむぐしながらそう呟けば、ネズが少しだけ照れくさそうに口元を抑えて、くしゃりと笑った。自分が美味しいと思ったものを共有できることは、こんなにも嬉しくて楽しい。

  

write:2020/09/23

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