生きづらい。
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2020/07/16
※妹夢主
※死ネタ
あいつの部屋のドア前に立つ。ノックしても返事は無く、声をかけても応答が無い。
仕方なくゆっくりドアを開けると、真っ暗な部屋からあいつのお気に入りのフレグランスが鼻腔を擽った。なるべく物音を立てず入り、出来る限り音を抑えてドアを閉める。わずかな月明かりが、部屋の影を仄かに照らしていた。
部屋の中を吟味するように見渡す。ドレッサーに並べられたメイク道具、ラックに掛けられたワンピース、デスクの上でスリープ状態のまま放置されたノートパソコン、雑に整えられたふくらみのあるベッド。
あいつの寝顔を拝んでやろうと思って、ベッド脇に浅く腰掛ける。またよだれを垂らして寝ているんじゃないかと思うと、無意識に口角が上がった。あいつは大人になっても子供のようだった。
フレグランスではない、あいつ特有の匂いがする冷たい感触のシーツに違和感を持ちつつ、同じように冷たい毛布をめくる。だが、そこにはあいつの好きだったぬいぐるみしか居なかった。ああ、どおりで。ぬいぐるみを少し観察してみると、あいつの髪の毛がくっ付いているのが見えた。ぬいぐるみを卒業出来ない、いつまで経ってもぬいぐるみが好きなあいつらしいと思う。
こんなにも、部屋はあいつの気配がたくさんの残っていて、あいつのお気に入りばかりが溢れているというのに、肝心のあいつが居ない。
何処に、行ったのだろう。
すると突然、部屋のドアが開いた。向くとそこには、逆光が象る小さな影があって、煌々とした光の眩しさに思わず目を細める。
「アニキ、また……!」
「……マリィ」
歳の離れた妹の少し怒気を含んだ声に、こちらにやって来る勢いを感じたが、影は部屋の前で立ちすくんでいた。部屋に入ることを躊躇っているように見える。
「マリィ、あいつ何処に行ったか知りませんか? 連絡どころか置き手紙すら無いんですよ」
困ったやつですよね、と不満を吐けば、影はふるふると震え始めた。
「……アニキ、っ大概にして」
その声は次第に嗚咽が混じるようになっていく。おれは影が何故泣いているのか分からなかった。
「アネキはっ、もぅ、ひっく、ッし、死んじゃったん、よ…!」
そして、ようやく想い出した。
あいつ──マリィの姉であり、おれのすぐ下の妹は、ある日突然この世を去ったことを。
あいつはもう地下深くで眠っているというのに、そのことを未だに受け入れられないおれは、こうして夢遊病のようにあいつを探している。
マリィには何度も酷なことを強いていると申し訳なく思っていても、いつもいつも繰り返してしまっていた。
おれの胸にぽっかりと空いた穴は、あいつにしか埋められないから。
write:2020/07/16
edit :2020/10/03