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​2020/07/02

※140SS​

 彼女は時々おれの知らない顔をする。少し遠い目の無意識に、幾度も心をかき乱された。何を想いだしているのか、なんて聞くことが出来ない。それが、彼女をおれの手が届かない神聖へと攫ってしまうから。咄嗟に手を掴めば、彼女は不思議そうにおれを見る。見覚えのある顔に、おれの中の卑賤が安堵した。

write:2020/07/02 - 2020/07/03

 ネズは時々なにかに怯えるような目をする。緊張しているのか、わたしを掴む手は汗ばんでいて不思議だ。大丈夫だよ、なんて気軽に言える雰囲気でもない。わたしに出来ることは、黙って身を寄せるだけ。そうすれば、ネズは少し安心したように目を瞑る。ぬくい体温だけが、わたしたちを繋げていてくれた。

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