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​2020/06/14

※死ネタ

夢の中で、おれは四足歩行のポケモンになっていた。対して彼女はヒトのままで、幾分小さいおれと同じ目線の高さに合わせて膝を着いている。見慣れた朗らかな笑顔はあたたかく感じるのに、おれを無造作に撫で回すその手は異様に冷たく感じられた。不意に胸が締め付けられるように苦しくなったおれは、どうしても手をあたためてやりたくて、しかし手足は鋭利な爪が付いていたから、比較的安全な舌で舐めて温もりを分けようとした。のだが、それはいやにしょっぱく感じて思わず顔を顰める。すると、彼女は可笑しそうに、しかし嬉しそうに笑って、ありがとうを言うようにおれを抱き締めてくれた。触れた彼女の身体は氷のように冷ややかで、おれはその華奢な身体をあたためてやることも、縋り付くように寄せられる身体を抱き返してやることも出来ない自分に心の中で嘆く。目から涙一滴も零れない薄情な自分に絶望していたところで、おもむろに目が醒める。気持ち悪い寝汗に塗れた身体は、正しくヒトのもの。それから、脳裏に焼き付いている悲惨な事故現場。もしおれがポケモンだったなら、きみの未来を護ることが出来たのでしょうか。きみの相棒たちでさえ太刀打ち出来なかったことに、おれなら身を呈してでも護り抜くことが出来たでしょうか。交わらざる身の上の淡い恋を夢見てしまうほど、おれは目の前で事切れたきみの温もりをいつまでも憶えている。

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write:2020/06/14

​edit  :2021/06/18

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