top of page

​2020/03/01

#夢でもあなたを想う

​ ​

 夢の中のきみは、ガラスの柩の中で眠る白雪姫でした。

 どうか目を覚まして欲しい。おれはきみにあれこれと色々な手を尽くしたよ。でも、きみは一向に目覚める気配は無くて、頬は凍っているように無感情な様子でさ。雪よりも真っ白くなって逝くのを、おれは止めることが出来なかった。

 そこに在る灯火が喪われるうつくしい光景を、ただ見ているだけのおれは、どうやらきみの王子様などではなかったんだよね。ただきみの死を悲しむだけの、しがない小人のひとりだったんだとようやく気づいたんだよ。

 そこで目が覚めたおれは、先ほどの夢の顛末をきみに話したってわけ。そしたらきみは「白雪姫ってさ、王子様のキスで起きるんじゃなくて、小人が柩を落とした衝撃で、喉に引っかかってた毒林檎が取れて目が覚めるんだよ」と楽しそうな顔でクスクス笑いながらそう言いやがる。

 その温かな色に染まった頬に会えた時、おれの杞憂は滑稽だったんだと、やっと安心できたんですよ。

​ 

write:2020/03/01

​edit  :2021/09/27

bottom of page