top of page

​2020/01/20

※相互さんの呟きより

「好きだった人のね、好きな花なの」

 彼女は日の入らない窓辺に、その花を活けた。

「わたしは特に好きって思ってなかったけど。でもさ、好きな人の好きなものって、自然と手が伸びちゃうんだよね。そしたら、いつの間にか好きになっちゃった」

 花弁に触れる指先はとても柔らかくて、愛おしげに見つめる瞳はひどく繊細そう。おれはそんな彼女の一挙一挙にたまらなく惹かれて、同時にそれをおれ以外にしている様子には強い嫉妬心を抱いた。

 おれの煮え滾る劣情を知らない無垢な彼女が、まるで分かっていたかのように、背後に立っていたおれを首を反らして見上げる。

「ネズくんもさ、そういうものある?」

「……そう、ですね」

 おれは、今すぐにでもその花冠を握り潰して、わざとらしく煽って来るきみにぶちまけたいくらいに、その花がたった今嫌いになりましたよ。

 

write:2020/01/20

​edit  :2021/09/14

bottom of page