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​2019/12/29

※ゲーム主人公(ユウリ)視点

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 おねいちゃんは、近所に住む農家さんだ。

「おねいちゃんはさ、ネズさんのこと、どう想ってるの?」

 愛おしそうに土いじりをするおねいちゃんに何気なく聞く。頼まれたからとか、そんなんじゃない。あたしが知りたいだけ。

「んー? またその話? ユウリちゃんはおませさんだねぇ」

 おねいちゃんは振り向かずに言う。

「はぐらかさないでよ」

 すぐコドモ扱いするおねいちゃんは、あんまり好きじゃない。ずっと妹みたいに接してくる。けれど、あたしだってガラル中を旅して成長したもん。身体だって、すぐ追いつく。おねいちゃんみたいに立派なものじゃなくても、あたしの身体は少しずつオトナに近づいてる。

「はいはい、特に何とも思ってないよ。ただの知り合い」

「……うん」

 やっとその言葉を聞けば、あたしは安心してネズさんに会いに行ける。オトナになれば、歳の差なんて些細なもの。あたしは早くオトナになりたかった。

「……今日もあいつは来てないんですね」

 あたしの後ろに居て欲しい姿が見えなくて、少しガッカリしたようにワントーン下がるネズさんの声色は、あんまり好きじゃない。

 ネズさんはいつだっておねいちゃんに夢中。あたしのことなんかこれっぽっちも目に入ってない。分かってる、オトナのおねいちゃんのことが好きだから。知ってる、あたしがまだコドモだから。

「おねいちゃんは土が恋人だからね」

 だから、ネズさんのことなんてちっとも見てないし考えてもないよ。諦めて。

 そう、想いを込めるけど。

「まあ、たまにはおれから会いに行くのもいいですかね」

 なんて、なんだか楽しそうに言うから。

 どうして、ネズさんに一切振り向きもしないおねいちゃんなの。どうして、目の前のあたしじゃダメなの。

 あたしを見てよ。あたしなら、おねいちゃんがくれない愛をいっぱいあげられる。今はコドモでも、もうすぐオトナになるよ。

​ ねぇ、気付かないフリしないでよ。

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write:2019/12/29

edit  :2020/06/22

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