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​2019/12/27

※元ネタ:水橋パルシィ(東方地霊殿)
 ​

 嫉妬というものは、わたしのように緑色の眼をした怪物で、わたしの心をなぶりものにして、餌食にする。

 片や売れっ子アーティスト、片やしがないストリートシンガー。

 片やパンク、片やプログレ。

 片や周囲に実力を認められたジムリーダー、片や何処にでもいるトレーナー。

 片やあくタイプ、片やエスパータイプ。

 なんて、比べたらキリがない。けれど、思わず比較してしまうのは、同じ街で一緒に育ったのに全くの正反対だから。一度意識したら、自然と抗心が募った。

 わたしも、いつかお前と同じ舞台に立つんだ。そして、歌ってやる、叫んでやる。わたしのすべてを、見せつけてやるんだ。

 しかし、世界は残酷で、世間は冷酷だった。勝者がいれば敗者がいて、勝者が注目を集めれば、敗者は見向きもされない。いつの時代も、才能の無い者へは無関心だ。

 わたしは、それでいい。周りのことなんて別にいい。わたしの世界を理解しているのは、わたしだけでいい。

 そんな想いを綴った歌も歌ったけれど、所詮は負け犬の遠吠え。ただの強がりだった。プライドだけで、ずっと立ち続けている。

 彼の背中が、遠い。歌もバトルもセンスがあって羨ましかった。彼の周りにはいつも人だかりが生まれて、わたしはいつも近寄れない。近くに行く自信がなければ、そんな資格も持って無かった。あるとしたら、それは同じ舞台に立てるようになった時に、自然と持ち合わせられるもの。

 だから、努力して、努力して。でもまだ足りなくて、補うようにまた努力して。隣に立てるように必死で、ずっと一人で打ち込んで。わたしなりにがんばって、きたのに。

 新しくチャンピオンになったというあのおんなのこ。バトルセンスがあって、努力も報われて、才能があって、世間の注目を一身に浴びている。いつの時代も、才能の有る者に関心だ。

 だから、羨ましかった。何の迷いもなく彼の隣に立っていることが。

 だから、羨ましかった。何の謙遜もなく彼に話しかけているのが。

 ただ、妬ましかった。

 緑色の眼をした怪物──何者にもなれないわたしは、深い森の中を彷徨い、夜霧に消えていくしかない。

 元から見向きもされていない、一方的な対抗心。彼の視界に、わたしはいない。あの子がいるだけ。

 ああ、妬ましい、妬ましい。

​ 誰も知らない。これはわたしだけの話。誰も居ない。ネズは見てくれない。

 

write:2019/12/27

​edit  :2021/08/29

 

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