top of page

​2019/12/16

※ネズが酷い

元ネタ:アナトリア咲く重DEAD
(狐夢想屋×ゼッケン屋)

「ごめんなさい。ごめんなさいネズ。ゆるして、おねがい。す、すてないで…っ」
 彼女は今日も軽々しく贖罪している。
 今日は何をしでかしたと言うと、おれ以外の男と言葉を交わしやがったんです。拒否することなく笑顔で受け入れていたからすぐに引き離して、そのまま連れ帰り『罰』を与えてあげました。するとどうでしょう、おれの脚に縋って甘えるように媚びて来やがる。かわいいやつですね。そんな愚かで可愛想な子の顔が見てみたいよ。前髪を引っ掴んで無理やり顔を上げさせました。その顔は、白と赤と透明と、いろいろな体液でぐちゃぐちゃになっていたんです。なんてひどい泣き顔。一体誰がこんな酷いことをしたんでしょう。……ああ、おれでしたね。でも彼女もおれのために喜んで『善行』をしてくれたから、おあいこです。
「っはは、なんで口を利いてやがりますか、おれはおまえみたいな虫の言葉なんて知らねぇよ」
 そう言ってやると、彼女はきらめく水晶からぽろぽろと光の粒をこぼし始めました。相変わらず不細工ですね。でも、嫌いじゃねぇですよ。掴んでいた前髪を放してやると、彼女はおれの前でうずくまりました。それから、おれに祈っているかのようにブツブツと謝罪をご丁寧に並べやがる。これではまるで『懺悔』のようだね。どんなに悔いてもおまえの『罪』は消えやしないと言うのに。
「ネズ、ネズ、ごめんなさい。もうしません、ゆるしてください。ごめんなさい、ごめんなさい」
 ただ許しを乞うだけの無意味な言葉に腸が煮えくり返る。申し訳ないなんて、これっぽっちも感じていないくせに。苛立ちのまま彼女の小さく縮こまっている身体をつま先で蹴り飛ばせば、簡単にひっくり返った。その勢いに、少し強く蹴り過ぎたように思ったけど、まあ、痛めつけられることが大好きな彼女なら悦んでいるはず。さほど気にすることじゃあないですね。彼女が起き上がる前に、胸ぐらを掴んで強制的におれの方へ顔を向けさせてこう言い放つ。
「あれでおれに跪いているつもりですか? 畏敬の念すら持ってないくせに。おまえって本当に最低ですね」
 光を失って、真っ暗闇の中におれだけを映すその水晶は、この世のどんな宝石より、誰より、とてもとても奇麗でしたね。おれはそんなきみがたまらなく好きなんです。

write:2019/12/16

​edit  :2020/08/10

 

bottom of page